"always feel so tired"
ピカソ「青の時代」で有名な絵画を大きく使ったこちらは
精神刺激剤の一種であるリタリンの広告。
陰鬱な女性の横顔が描かれた名画はもちろん素晴らしいんですが
デザインとして秀逸なのは
あえて左右に振れて揃わない、この不安定な文字組みじゃないですかね。
さらに画面全体の話をすれば、
このゆらゆらした文字の上に
おもいっきり重たい色の絵画が乗せられている、という重心の不安定さ。
憂鬱さがこれでもかと伝わる、渋いデザインだと思います。
以下はリタリンを知りたいあなたへ。
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Lethargy and fatigue are often a problem after childbirth, in convalescence, mild depression, over sedation, the menopause and in many old patients. the gentle action of Ritalin quickly restores mental and physical activity.
無気力や疲労感、それは出産後や回復期、軽度の抑うつ、過鎮静、閉経後、またたくさんの高齢の患者さんにとって 頻繁に問題となるものです。 リタリンの穏やかな効果は、すぐに精神活動・身体活動を回復させてくれます。
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"you can bring your patients out of the corner"
部屋の隅も隅で、うずくまった人のような姿。
思わず二度見してしまうこの広告は、リタリンという医薬品のもの。
成分はチルフェニデート塩酸塩、区分は精神刺激剤や中枢神経興奮剤。
強い覚醒効果があるため、その手の非合法ちっくな用途に使われることもあるとかないとか。
ナルコレプシーは日中に場所を選ばず訪れる睡眠発作のこと。
この広告は、いつ発作に襲われるか分からないまま
部屋の隅で過ごす患者の姿を描いているようです。
(もしくは眠ってしまっているのかも。)
そして、浅い眠りは悪夢を見せるんだってさ。
以下文章詳細----
retalin has proved effective in awakening patients ro reality. even in "severe deteriorated chronic schizophrenia of long standing." The most responsive patients to Ritalin appear to be the true depressives (negative, withdrawn, dull, listless, aphathetic) - without correlation to age or length of hospitalization. On 10 to 40 mg. Ritalin t.i.d., such patients become more amenable to therapy, suggestion, and social participation.
リタリンは患者の覚醒効果が認められている。
たとえそれが長期に渡り慢性化したひどい統合失調の患者であっても。
リタリンの効果が最も期待されるのは抑うつ状態(悲観、引きこもり、感情鈍麻、憂鬱、意欲減退)の患者 - 年齢や病歴に関係なく - である。
1日3回、10から40mgの投与によって、そのような患者は治療や提言、社会参加に積極的になる。
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"people today are seeking freedom"
見よ、この女性のあふれんばかりの解放感、
そしていささか暑苦しいぐらいに強調された「FREEDOM」の文字。
これはベンゾジアゼピン系の向精神薬、オキサゼパムの商品名であるseraxの広告。
薬剤としては主に不安障害やアルコール離脱症状の治療に用いられる、ようです。
Serax (oxazepam) medical facts from Drugs.com
明らかに病室から抜け出してきて着の身着のままだし
なんかこの勢いが逆に異常なテンションを醸し出してるし
この広告を見て、こんなに効くんだ!と効果を期待するか
むしろ穏やかでない空気を感じるかは人それぞれなんじゃないかな。
ん、私は後者です。
"When I'm all tensed up, driving relaxes me."
見開かれた目、固く食いしばられた歯が
まるで何かの衝撃を受けたかのように上下にぶれている。
(それは交通事故の瞬間のように!)
思わず目を背けたくなる衝撃的なビジュアル。
細かい文章は潰れてしまっていてきちんと読めないけど
どうやら過度の緊張状態の時に運転するのはやめましょう、という啓蒙広告のようだ。
つまりこのコピー、逆説的に使われているみたい。
mobilといえば、車のオイルで有名なあの会社ですね。
緊張状態のこわばり・事故の衝撃を二重写しに表現しつつ
あぁ、今日は調子が悪いからドライブはやめておこう・・
思わずそんな気分にさせる、なんとも秀逸な広告。
"Mobil - We want you to live."
(モービル - あなたに生きていてほしい)
"end to his violent outburst"
Thorazine / ソラジン
「ソラジン」というメジャートランキライザーの広告。
成分はクロルプロマジンで、日本ではウィンタミンやコントミンとして製品化されている。
when the patient lashes out against "them" -
(患者が"彼ら"と戦い始めたら-)
の"them"ー大きな恐怖の目が、見ている側にも恐怖を喚起するインパクトのあるビジュアル。
余計な色は入れない、余計な遊びもいらない。
ただドーパミンが生んだ恐怖の姿をストレートに表現した広告。
画質のせいでちょっと文字が震えてるように見えるのがまた
なんとも言えない不安の影を醸し出してて、いいな。
幻覚と対峙している患者さんがへっぴり腰なのも、妙にリアル。