que's queer things

脊髄あたりを撫でては摩る何かを

アンゴウ

坂口安吾が好きだ。

 

最近、「人間失格」の宣伝をよく見かけるので

ふとそんなことを考えた。

 

太宰については語れるほどの知識がない。

高校生の頃「人間失格」と「斜陽」を読んだくらいで

このナルシシズムに濡れたしっとりした感傷的退廃のような何かはダメだ、と思ったのを覚えている。

自分が裕福でないというビハインドに打ちのめされていた時期でもあって、こっちの絶望はそんなもんじゃねぇという、微かな怒りすら感じていた。

 

そのまま大人になってしまったので、私にとって太宰治についての知識は

中原中也の言い放った「青鯖が空に浮かんだような顔しやがって」という言葉ぐらいしかない。

ちなみに中也の詩はとても好きだった。いつかこんな暴言を吐いてみたい。

 

安吾に対しても同じようなイメージがあって、最初は読まず嫌いだったのだが

堕落論」でその先入観があっさり崩されてしまった。

なんてったって「生きよ堕ちよ」である。

これは、悪魔があなたにそう囁いていますなんていうデカダンな話じゃない。

「生きてりゃ汚いこともしなきゃいけない、老いて若さも失っていく、でも綺麗なままでさっさと死のうなんて言ってんじゃねぇ、醜くても強かに生きていけ」

要はそういう話である。強い。

 

安吾作品には妙な潔癖さもないし、湿った感傷もない。

決して明るい話じゃないし、世界観だって何処と無く暗い。

それなのに何かがカラッとしている。

絶望や失望の先の、ある種の開き直りのような空気がある。

一周回って元気、というやつだ。

 

実際、安吾の人となりを調べてみると

なるほどそれならこうなるよなぁという感じなのだが、

それについてはまた、機会があれば書こうと思う。

 

最後に、「夜長姫と耳男」は名作です。